浅草は夜でも明るい。
建物の明かりと人で溢れている。
人と人の合間を縫うように歩き、どことなく夢見心地な気分で辺りを見ていると、
ふと白い帽子に目がとまった。
月彦さんの後ろ姿に似ている。
というか月彦さんだ。
間違いない。隣りにいる女性は奥さんで、腕に抱えているのは娘さんだ。
初めて外で出会う月彦さんに気分が高揚する。
どことなく掴みどころのなかった彼に、少しだけ近付けたようなこそばゆい気持ちになる。
月彦さん、といつものように声をかけようと足を踏み出した瞬間。
誰かに肩を思い切り退けられた。
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