(やっとの思いで爆豪とのデートの約束を取り付けた)
(名目はトレッキング用品を見るのに付き合ってもらうことだが、男女が2人で出かけるなどデート以外の何だと言うのか)

(ーーーー待ちに待ったその約束の日。天気予報では一日晴れのはずだったが…)


……クソ、止まねぇな。

あの女嘘つきやがった…天気くらい当てろや!このご時世そういう個性なんかいくらでもあんだろ!!


(爆豪行きつけのアウトドアショップを一通り見て回り、休憩も兼ねてお昼ご飯を食べる場所を探していたところ、突然降り出した雨)
(それほど激しい訳ではないが、つまりゲリラ豪雨ではないということだ。通り雨には見えない、止む気配もない…)


チッ……ここ最近は晴れ続きだっただろうが。何でよりによって今日なんだ!俺を避けろや雨雲!!


(今日はあなたが少し寝坊してしまい、挨拶もそこそこにあちこち歩いた為、会った瞬間の感動を消化し切れていなかったので…改めて爆豪を見るのは今日初めてだ)

(見慣れた制服でも、寮で見る部屋着でも、もちろんヒーローコスチュームでもない、普段着よりちょっとおしゃれな爆豪のよそ行きの服装)
(アジフライなど微妙なものもあるが、やはり爆豪はものを見るセンスがいい)
(少し奇抜な柄ではあるが、服の個性を殺さず、かと言って着られている訳でもない。パンツも今日はスキニーのような、足の長さを強調するものを選んでおり、元の良さを引き立たせている)

(基本的に爆豪は何を着ても似合う。例えそれがアジフライであろうと、きっと緑谷の着ている文字Tシャツだって着こなしてしまうのだろう)
(そんな爆豪が、今日あなたに会うためにきちんとした格好を選んで来てくれた)

(…惚れた欲目もあるだろうが…とにかく直視出来ない程かっこいい)

(それに引き換え、自分はどうだろう)


(何を着て行こうか、昨日夜遅くまで姿見の前でファッションショーを開催していた)
(朝だってそのせいで寝過ぎてしまい、主人を失ったショー会場は散らかったままだ)

(懸命に悩んで、少しでも爆豪に可愛いと思って欲しくて選んだ、女の子らしいピンク色のスカート)
(雑貨屋で一目惚れして以来、お部屋のインテリアと化していたお花の髪飾りだって日の目を見た)

(そんな精一杯のおしゃれも、今の雨で湿って目も当てられない)
(鞄の奥に見つけた1本の折りたたみ傘が、何故かとても憎らしく思えた)


恋に落ちる音がした