「ぇ……おいコラ!!起きろよ!!」


(誰かの怒鳴り声で、ゆっくりと意識が浮上する)
(いつの間にか眠ってしまっていたようだ)
(…ん?)


「ここどこ?あんたがやったの?つかアンタ誰?」


(あなたを真上から見下ろして凄む男)
(強制的に意識を覚醒させようとしているのか、腕を強く掴まれた。痛い!)
(逆光で見えにくいが、見慣れたミルクティー色の髪、つり上がった目尻、燃えるような紅い瞳…
なんだ、爆豪だ…)


(…………………あれ?)



「ぼーっとしてないでさ。早いとこ答えないとどうなるかわかってる?

俺の個性ちょー強ぇから。火傷どころじゃ済まないかんね。」


(見慣れない制服、聞き慣れない言葉遣い、どこか飄々とした雰囲気、『誰だ』という台詞…違和感が積み重なる)
(あまりの衝撃にまだ夢の中かと疑ったが、掴まれた腕は痛みを訴える)


(違う……爆豪じゃない…!)



「ちょっと。聞こえてる、おじょーさん?


早いとこ答えちゃわないと…


怪我すんぞ」


(誰だ…?)
(よく観察すると、いくつも違和感が見つかる)
(自信に満ちた態度や制服の着崩し方…見た目はそっくりだ、だが別の人物だ)


(ふと、昨日の出来事が脳裏を過ぎる)
(短冊に書いた願い事…)


("初期の爆豪に会ってみたい")




("初期の")




(…しまった!)
(あれは"最初の頃の子どもの爆豪"という意味で書いたつもりだったが…)
(あろうことか、牽牛と織姫は子どもではなく、"初期設定の爆豪"を寄越してくれやがったらしい)


(…とにかくこうなったのは自分のせいだろう)
(未だこちらを睨みつけ臨戦態勢を解かない初期設定の爆豪…長いので初期豪と呼ぶことにしよう)
(初期豪をなんとか宥め、部屋に連れて行くことにした)


七夕20181