(……夜這い、なんて言っても世名のいるこの街は常に夜、太陽が出ることは無い常夜の街だ)
(だから、世名が眠っている時間にたまたま来れた時を狙うしか無かった)
(いつも通り世名の家へ訪れたその日、家の灯りは消えていて)
(ドアノックを鳴らしても世名が出てくる気配がなく、ドアノブに手をかけると鍵がかかっていなかった)
(こういう時は大抵、こちらで言う深夜の時間帯で世名が寝ている時だ)
(私がいつ来てもいいように、世名は眠る時鍵を開けておいてくれているから)
(起こさないようにそっと玄関からおじゃまして、後ろ手に鍵をかけてから、ベッドの上で寝息を立てる世名へと近付く)
(世名……?)
(深く眠っているようで、声をかけても起きる気配はなかった)
(……もしかして、今なら)
(そう思い、バクバクと高鳴る心臓のあたりをぎゅっと手でおさえながら眠る世名へと顔を近づけた時──)
(ガチャリ、とさっき閉めたはずの玄関の鍵が開く音がした)
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