(先輩に無断で朝帰りしてしまった。
アパートへの道を歩きながら、すでに後悔し始めていた。
普段はどこへ行くにも連絡をしろ、仕事以外で男と会うな、用事がないときは自分の側にいろと口うるさく言ってくる先輩に嫌気がさし、今日初めてオールしてしまった。

携帯には先輩からの着信が鬼のように届いてる。『早川アキ』の名で埋まっている履歴を見てゾッとした。

…先輩、きっと怒ってるよね。

怒った先輩は恐ろしい。いつもデンジくんとパワーちゃんにシャレにならない悪戯をされて怒り狂ってるから分かる。
次、顔を合わせたらきっとその瞬間に怒鳴られるだろう。もしかしたら殴られるかもしれない。今までは一度だって暴力を振るわれたことはないけど…。

でも、一緒に朝を迎えてさっき別れてきたのは男じゃない。女友達だ。だから正直にそのことを話して、もしものときはその女友達に電話して潔白を証明してもらえば許してくれる……はず。

何度目かのため息をついて、引っ越したばかりのアパートの階段を上がり始めた
先輩に言われるがまま引っ越してきたアパート。隣はもちろん先輩の部屋。
家の前で待っていてもおかしくない…と想像して、体が震えた。

この階段を上った先に、先輩が…。















部屋の前に先輩はいなかった。ほっと一息つく。
良かった、今日は休日だしきっとまだ寝てるんだ。

一安心して家のドアの前で止まり、カバンから鍵を出そうとする。
鍵……そうだ、確か先輩にも合鍵を渡







おかえり。


◆無断で朝帰りする