薬に人格付きの妄想を埋め込むなんて誰が思い付いたのだろうか。
あのカプセルは謂わば卵で、その中にヒトの精神の部屋に介入したり、増設したり、俺という人格を存在させる効果が詰まっている。

ーここが俺の職場か。
白は既にインプットされている人の精神構造の中にプログラム通り入り込んだ。
不具合がないかのチェックも兼ねて、部屋をざっと見て回る事にした。
ヒトの精神というのは円状の部屋で、ホールと呼んでいる。
その中心に本人がいるのだが、そこのスポットライトに当たると認識されてしまうので、当たらないようにホール周りの壁に沿うように歩く。

別段広くもない、壁と地だけがある殺風景な場所だ。
すると、半分ほど歩いた場所に謎のドアがあった。
ちょうど白の部屋の向かい側だ。

「何だこの部屋。知識にない…」

一拍おいて、ノブに手を掛けた。

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