お姫様が悪い竜にさらわれ、勇者が悪い竜を討ち果たし、お姫様と勇者が結ばれる…男の子も女の子…どちらも一度は憧れる、なんてことない話。

男の子は勇ましく竜と戦う勇者の憧れ、女の子はそんな勇者に救われ結ばれる事を夢に見る。

私も多分に漏れず、幼い頃はいつかはカッコいい勇者様が迎えに来てくれると信じ、その時が来るのを夢見ていた。



――だが、今はもう知っている。そんな存在はいる訳ないと。私の周りにはお父さんの繋がりを求める人とヒソヒソと噂を立てる人ばかり。たまたま仲良くなれそうな子に会えたとしても、その頃には次の土地へ旅立たなければならず、勇者どころか友達ひとりいない。そんな環境の中でも誰も助けてはくれなかった。

私は旅を嫌いになっていった。そして決めていた。今度家に帰ったら、もうお父さんと旅に出ず、お母さんと一緒に静かに暮らそうと…何も期待せず、何も起こらない…なんてことない穏やかな日々の中に埋もれてしまおう…と。





――そんな時だ。皆に出逢ったのは…そして、私にとっての勇者様に…〇〇、あなたに出逢えたのは。

クラウの初恋1