瞼を開いた時点で既に体が重かった。
布団から出たくないという欲求に逆らい、重い体を引き摺って這い出ると視界のぶれを感じ今回は厳しいと第六感が告げていた。

(ひとまずしのぶさん……いや、蝶屋敷の誰かを尋ねよう)

鎹鴉を呼ぶ際に出た空咳と喉の痛みに眉根を寄せながら、緩慢な動きで私服に着替える。
壁を伝い覚束無い足取りで廊下を歩いていると、誰かとぶつかってしまった。

(すみませ……ゴホッ)

袖で口元を覆いながら見上げた先に居たのは──。

ぶつかった相手は?(2)
風邪をひく