流石の俺も怒りより呆れの方が勝ってきたぞ……。
宍色髪の少年の視線の先──仲間を庇った事で負った切り傷に、錆兎はいつも以上に大きな溜息をついた。


大怪我をし熱に魘されていた時、冷たい手が額にあてられた。
薄ら開いた瞳の先に居たのが、どこか怒ったような顔をしながらこちらを見つめる少年、錆兎だった。
以降私が手負い状態で眠りにつくと、ほぼ間違いなく夢の中に現れる彼は最早日常の一部になりつつある。

今回は仲間を庇ったな。黙ったままということは当たりか。
お前もいつかは誰かの元に嫁ぐかもしれないんだ、もう少し……。


懐から取り出した軟膏を傷口に塗り込んでくれる錆兎にありがとう。と伝えてから、ああそうかと自分の中にあった既視感に納得する。
前に怪我をした時に炭治郎が使っていた軟膏と酷似しているんだ。


体の動かし方を考えろ。〇〇ならやれる筈だ。

頭を優しく撫でる手はどこか義勇と似ている。
はぁい。と返事すると錆兎は口元を綻ばせ、その姿を消した。
錆兎