見かけによらず、強いんだね君。迫る隊員を木のある方へ誘い込み、無力化してから枝に巻き付けるを何度繰り返しただろう。
四肢が、筋肉が悲鳴を上げ息も絶え絶えだ。
木に吊り上げられた隊士達と共に朝を迎えようとしていた時、第三者に声を掛けられた。
──弱音は吐くな、弱みを見せるな。
即座に息を整え、人ならざる外貌をした少年を睥睨する。
小さな指に白い糸を通し、暇そうな顔であやとりをしていた彼の目に一瞬屈しそうになる。
だがここで退けば、後ろの隊員は皆この鬼の腹の中に収まる。
深い闇の中で私がしてきた事、全て無駄になる。
それだけは何としても防ぎたい!!
君、結構可愛い顔してるね。
それに僕、君みたいな反抗的な子を"従順"にさせるのも嫌いじゃないんだ。
……後ろの奴ら全員助けてあげるから、僕のお嫁さんになって?(他者の命をちらつかせれば、そちらの要望を快諾すると!?
私が首を縦に振った後に嘲りながら彼ら共々殺すかもしれない輩の言葉を、誰が信じるものか!!)
そう。じゃあもうこいつら殺していいよ、母さん。上がる血飛沫と断末魔。
空から彼らの肉片と滝のように血が降ってくる。
頭に血が上った私が日輪刀を抜くより早く、地面を抉った白糸が私の首筋を掠めた。
刀を持った人間複数に対して、君は刃を振るう事なく器用に避けて枝にひっかけてたよね。
君みたいに強くて優しい子なら誰も反対しないよ、大丈夫。ゆったりとした余裕綽々の足取りで近付いてくる鬼にせめて一太刀、と思うも疲労と頸部負傷による出血で視界は狭まり、脳も働かなくなってきた。
(た、んじろ……ごめん……)
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