は、は、と口から漏れる荒々しい吐息も顔に張り付いた髪も、今にも縺れて倒れてしまいそうな足も今はどうでもよかった。
それより、何より私は後ろから追ってくる異形の存在から何としても逃げ延びなくてはならない。

数刻前までぼんやりと空を仰ぎ見て、早く家に帰って汗でベタベタになった体を清めたいなぁなんて呑気に考えていたはずだったのに。
開きっぱなしになった戸の前で佇んでいたのは到底人間と思えないほど白い肌と鋭利な爪を持ったたモノだった。

義勇邂逅if