夜が深まると女、子供を好む異形の存在が姿を現す──。遥か昔に聞いた言葉を思い出した私はそのまま家に侵入しようとしている『ソレ』に向かって無意識に叫んでいた。
「お前が欲している若い女はこっちだ!!」異形の者がこちらを捉えて舌なめずりをしたのを見ると同時に私は駆け出した。
死ぬのが怖くない訳では無い。ただ、何としても親からそいつを引き離したい一心だった。
どれだけの時間駆けているのだろう。
とうに喉はカラカラに乾き、走っているうちに小石を踏んだ足は赤黒く変色し、足の感覚はすっかり消失していた。それでも足を止める訳にはいかない。
『あぁ゛……飽きたなァ』
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