目標の鬼はやけにへっぴり腰で隊服を見た途端、足早に逃げてしまったのだから思わず〇〇の方に目をやってしまった。

長い長い追いかけっこに息が切れ始めてきた俺の顔をじっと見た〇〇が前を見据え
飛ばして。と言ってきた時は大層驚いたが、そうでもしないとあの鬼には追いつけない。

分かった!と声高らかに鬼の進行方向に背中を向け、足場を作る。
一気に自分より高い場所に躍り出た〇〇は刀を構え、降下する勢いに任せ型を放つ。

良かった、〇〇の一撃は決まり…………。
上を通過する時に「そういえば今日はカナヲと同じ型の隊服なんだな」という何気ないやり取りが脳裏を掠める。
ゆらゆら揺れる短い丈、その奥から覗くもの。



ありがとう炭治郎!

屈託のない表情で感謝の言葉を伝えてくれる〇〇に申し訳がなくて、然しながらあれは不可抵抗……。
いやでも、と一人悶々とした気持ちに蓋をして〇〇に笑いかけた。
炭治郎(15)