泣きながら途方もない距離を歩いていたらしい。
ハッキリしない記憶を手繰りながら早く無惨様の元に帰らないと、と涙を拭った時に深い傷を負っている見知った(いいや、私はこんな子ども知らない)人物と遭遇した。

逃げず、話を聞いてくれ〇〇!

彼からどんな言葉がかかるか、分からない。
頸を斬られる、倒されるという感情とは異なる恐怖心に襲われ、みっともなく鬼狩りから背を向け逃げ出す。
背中に刺さる悲痛な声に軋む心を制し、少年の声が聞こえなくなるまで闇のなか足を動かし続けた。


(わたしは、一体何なのだろう)

花札の耳飾りをした少年を見て真っ先に浮かんだ感情──申し訳なさ、懐かしさ、それとほんの僅かな殺意。
鉛を仕込んだように重い足を引き摺りながら、当人すら理解しきれない感情の波に〇〇は頭を抱え蹲るしかなかった。
流離う鬼