乾いた咳が私とお館様の間に響く。
唇を開きかけると同時に甘い香が一帯に漂った。
随分長い時間話してられるようなので様子を見に参りました。
……お館様?

ああ、すまない。
話すべき事は余すことなく〇〇に伝えたから二人共下がってくれて構わないよ。


頭を下げて屋敷を後にする時、思い起こされたのはお館様の咳と顔色。
私の勘違いでなければあれは──いいや考えるのはよそう。
再び仰ぎ見た月は依然美しく輝いていた。
拝謁3