強打した背中を擦りながら、炭治郎は体を起こした。
鬼の攻撃で随分と遠くに飛ばされてしまったものの、咄嗟に型を使い衝撃を和らげたお陰で脳震盪だけで済んだようだ。
…………〇〇?そうだ、〇〇は!?
攻撃を受けた間際に聞こえた声は確かにこちらの身を案じていた。
僅かばかり離れた先から聞こえる音と立ち上る砂埃に炭治郎は悪寒を覚えながら駆ける。
手も足も出なかった鬼と〇〇が対等に渡り合えている──!
四肢を斬り落とされ、目玉を抉って視界まで奪われた鬼を見下す〇〇がトドメとばかりに日輪刀を掲げる。
(さようなら、虫けら鬼)
胴と泣き分かれた顔が地面に転がる。
それを煩いとばかりに〇〇の足がぐしゃりと踏み潰す。
〇〇……。
無に近い顔が喜色に滲む。
良かった怪我はない?と恐らく言いかけて〇〇が蹲る。
顔を顰め、荒い呼吸を繰り返しながら血を吐き続けている〇〇を一秒も早くしのぶさんの元に連れて行かないと取り返しがつかなくなる!!
ごめん!と断りを入れるのすらもどかしく、抱き上げる。
(たんじ……ろ、けが……ない?)
俺は大丈夫だ!だから〇〇は自分の事を考えろ!!
謝罪を告げて瞼を閉じた〇〇の心音が弱まっていくのを感じながら、闇の中炭治郎の駆ける足音だけが響いていた。
我を忘れた愚か者の果て