……血と、〇〇の匂いが濃くなった。

最悪の事態を想定していながら、僅かな希望に賭けたいと思うのは悪い事だろうか。
乱れた呼吸を整えるのは、〇〇の安否を確認してからだ。

軋む体に鞭を打ち、足に力を入れた。
その直後目に飛び込んできたのは血に濡れ倒れている〇〇の姿。

〇〇しっかりするんだ!何が……?!


(た、んじろ……)

良かった、まだ彼女は生きてる!
〇〇の体を抱き起こそうと背中に腕を回すと、一生忘れまいと誓ったあの男の匂いが鼻を掠めた。


(おね……がい。……わたしが、おにになるまえに────ころ、して)

みるみるうちに塞がっていく傷と、〇〇から漏れ出る敵意。
〇〇は俺が来る事を信じて、耐えていたのだろう。
日輪刀に手をかけると〇〇の殺意が揺らいだ気がして、そのまま彼女の首に刃を宛がった。


悪夢を見る