──発端は瑣末な事だった。
鬼の技に翻弄されながらもどうにかして突破口を見出そうとしていた時、共に任務に当たっていた炭治郎の体が遠方へ投げ飛ばされた。

轟風のなか微かに聞こえた炭治郎の呻き声に目こそ向けられはしないが、大声で炭治郎の名前を呼ぶ。

今までよく、鬼狩りをしてこれたな!
貴様のように弱き者が!!



……弱い?誰が、誰を弱いだって?
今まで血反吐を吐き何度も膝を屈しそうになりながら立ち上がってきた炭治郎が?
その苦労を一切知らないおまえが、何をほざく。
頭の片隅でぷちん、と何かが切れる音がした。


(──永劫に、その口を閉じろ)

己に対する罵倒なら幾らでも受ける。紛うことなく事実だから。
だが仲間への謗りは、万死に値する。

いつもより体が軽い。
繰り出す一撃も重い。
鬼の次の動作が分かる────今、刀を振ればあいつを確実に殺せる。

〇〇!!

怒りで我を忘れる