いやあ強い強い!
女の子なのに随分頑張ったね、偉いなあ。


両脚から崩れ落ちた私に冷やかな双眸を向けている鬼は強いとも、頑張ったとも、偉いとも微塵に思っていない。
感情を繕っているだけの空っぽの存在に、私は負けてしまうのか。

(悔しい……死にたくない)

地面についた血まみれの手にぽたりぽたりと水滴が落ちていく。
戦意喪失を確認した鬼は傍らに膝を着き、目尻を下げた。

あの方の血を分けてあげよう。そうすれば君は死なずに済む。

懐から取り出された瓶は"死にたくない"と発さねば良かったと本能から後悔させるほどに、おどろおどろしいものだった。
大量の出血でまともに機能していない腕を持ち上げそれを飲ませるくらいなら、殺してほしい。とみっともなく鬼に縋りつき、嘆願する。

心無き者