いきなり何を言い出すかと思えば……〇〇には今の俺が不幸に見えるのか。

〇〇が首を振る。
問わずとも彼女の胸の内など分かりきっているのに、直接言葉を聞きたくて愛想も何も無い言葉を連ねてしまった。


(そんな事ないです!)

お前なら、そう言うだろうと分かっていたよ。

(ただ義勇さんって目を離せないというのか……目が覚めたら羽織だけを残して居なくなってしまうような、そんな不安に駆られるんです)

それは〇〇自身の事ではないか?
少しでも目を離すと妙な輩に声を掛けられていたり、はぐれていたり……。
数刻前まで隣で弾んでいた声が最期になるかもしれないという俺の思考を見透かしていたのかと思案する。


(何十何百と義勇さんに助けてもらっておきながら、おかしいですよね。
──時折とても沈痛そうな、自分の奥深くで根を張った何かを悔やんで今にも泣きそうな顔を義勇さんがされるので、心配なんです)

こいつはどれ・・の事を言っている?
眉尻を下げた〇〇が深々と頭を下げる。



(末端の隊士の戯言と聞き流して下さい、気に留めないで下さい────幸せになって下さい、義勇さん)

どこまでも切な願いに、結局俺は何も返せなかった。
幸せになって