いつまでも僕の前をちょこまかと……目障りだな。
いつもなら即座に切り刻んで終わらせてあげるんだけど、今日は機嫌が良いから冥土の土産として特別に見せてあげるよ。


鬼が指を動かすと四肢を縛られ、血の気のない顔をした〇〇が月明かりの下に姿を現した。

〇〇!

〇〇……可愛いこの子にぴったりな名前だね。
お前がこの山に入ってくる少し前に此処に来たんだけど、糸で操られた仲間の攻撃を綺麗に躱して全部引っ掛けたんだ。
同じ事をしてたから、〇〇から話を聞いていたと思ったんだけど反応を見るに違うみたいだね。


(た、んじ……ろ?)

〇〇が酷く衰弱しているのは誰の目から見ても明らかだった。
首を拘束する糸から〇〇の血が滴り折れた刀身を濡らす。

捕まえた後も意識が戻ると暴れるから、ずっと出血させていたんだ。

捕まえる……?

最初は助けた隊士と引き換えにお嫁さんになって欲しいって言ったんだけど、信用出来ないって断られてしまってね。
素直に頷いていたらこんな痛い目に遭わず済んだのに、〇〇って馬鹿だよね。


……ふざけるな!
命を賭けて仲間を守り抜こうとした〇〇を侮辱するのも程々にしろ!!
それに〇〇は人間だ!!当人の心や気持ちを無視して嫁にするだなんて、おかしいだろう!?


さっきから何か口を開くと否定ばかり……。
お前を殺して〇〇に白無垢を着せてあげるんだ。そろそろ消えなよ。


可愛い花嫁さん