顔色が悪いよ、と言って頬に伸ばされた手は柔らかく何より暖かい。
彼女から強い血の匂いがしない事に顔を綻ばせて嫌な夢を見たんだ。と返す。

唯一の肉親となった禰豆子とはまた別に大切だと、この手で守り抜きたいと思える子に生きているうちに出会えるなんて俺はとても幸せだと思う。
だからこそ大切な女の子──〇〇が人ですらなくなり、己が手を下す他ないあの夢が、刀身を抜き払った時に見せた安らかな顔が、切に紡がれた声が忘れられない。

……少しだけ、抱きしめてもいいかな。

両手を広げ待機している〇〇の胸に顔を埋め、考える。
あって欲しくもない、夢で見たあの光景が現実のものとなった時に躊躇わず彼女の願望を叶えられるのか。
俺は躊躇なく刃を振るえるか