翌日から童磨は私の目の前で自身に縋り、頼ってきた信者の女を貪るようになった。

鬼になって数日が経過したし、〇〇ちゃんもそろそろお腹が空いてきた頃合いだろう?

骨がへしゃげる音、咀嚼音、一帯に広がる肉片と血の匂い────。
鋭くなった爪で己の体を傷付ける事で、鬼としての本能から抗ってきたが日に日にそれは強まっていっている。

いや……私はまだ死にたくありません!
鬼狩り様、どうかお助け下さい!


女性の言葉に奥に沈みこんでいた何かが浮上する。
脳裏に浮かぶ滅の字と刀、それといつも私の傍に居てくれた彼の頼もしい背中。
……私には守りたい人が、居たんだった。

何も我慢する必要はないぞ。
人を喰らいたいと思うのは鬼として至極、当たり前の事だろう?


助けを求めたまま、背骨を折られ四肢を引きちぎられた肉片じょせいを前に涎が止まらない。

童磨は笑顔を貼り付けたまま、新鮮な人間の肉を手に近付いてくる。
嫌だ、たべたくない!
そんな事をしてしまったら、私は本当に後戻り出来なくなる!あの人に顔向け出来なくなってしまう!!

俺が食べさせてあげような。
泣くほど人間が喰いたかったのに君は今までよく耐えた、偉い!
もう、それも必要も無いんだぞ。


脳内に響く嫌な音、匂い、感触。
それを美味だと思い、嚥下した私の顔は大粒の涙で濡れていた。
人ならざぬ者