見知らぬ男性に手首を掴まれた。
最初はただぶつかっただけかと思い、頭を下げて立ち去ろうとしたがどうやらそうではないらしい。
色々声を掛けられるが、見知らぬ人と外食するほど警戒心がないわけでもないので何とか穏便に事を運ぼうと躍起になってくる。

(急いでいるので……)

ちょっとだけだからさぁ。

〇〇が嫌がってるだろう!?
今にも泣きだしそうな女の子の手を無理矢理引いて、男として何も感じないのか!!


誰も助けてくれない、男女間の力の差を感じぽろりと涙が零れ落ちた時、市松模様の羽織に視界が包まれた。
炭治郎の言葉を発端に周囲の人々も騒がしくなり、居心地が悪くなった男は舌打ちを残し踵を返した

手首、赤くなってるな。帰ったら冷やそう。

細められた瞳が真っ赤になった手首に移った時、そこには確かに怒りの色が燻っていた。

ありがとう、炭治郎…
ナンパされる