時折、炭治郎が遠くに感じる時がある。
技量・天賦の才・人格……私は全てに於いて彼に劣っている。
そんな私が彼の側で、こうして寄り添う事は果たして許されるのだろうか。

炭治郎がこれ以上遠くに言ってしまわないように、私なりに頑張っているはずなのに目線を上げると彼は遥か先で背中を向けているのだ。


らしくないとは百も承知。
そうなってしまったのは、異性から告白されている場面に居合わせてしまったから。

どうした〇〇。

縋りつけば優しい彼は歩みをきっと止めて歩幅を合わせてくれる。
しかしそれは私のなけなしの矜持が許さない。

(炭治郎は凄いなぁと思っただけだよ)

握り返された炭治郎の大きな手からもたらされた安心感で心を覆い、日毎開く距離に目を瞑った。
すがるように、握られた手に力を込める