「○○!!!」(大声で名前を呼ばれ、驚いて振り返ると詰襟を着た男の子が私の腕を握りしめていた。)
(え、何で私の名前……。それに腕……。)
(そう呟くと、黒くて長い髪の男の子は目を大きく見開いて、その後ゆっくりと腕を離した。)
……ごめん、びっくりさせたね。
えっと、僕は時透無一郎。僕も今日この学校に入学するんだ。
それで、あの……。
(……あなたも蜜璃さんの知り合い?)
(言い淀む彼にそう問いかけると、再び男の子は驚いたように息をのんで、そう、と返した。)
そう、そうなんだ。
甘露寺さんとは前から親しくしてもらってて……。
それで、知り合いの子も今日入学するのよって聞いて気になってたんだ。
(なんだ、そうなんだ。蜜璃さん、知り合いが多くてすごいなぁ。)
(それなら、今日からよろしくね。)
(私が手を差し出すと、無一郎くんは少し迷った様子で私の手を握り返した。)
「おい無一郎!勝手にどこかに行くな!」
(人混みを掻き分けて、男の子と同じ顔をした子が近付いてきた。)
……あ、兄さん。
ごめん、僕もう行くね。
今度、兄さんのことも紹介するよ。
僕たちは双子なんだ。
(うん、またね。)
(兄と呼ばれた人に駆け寄る無一郎くんに背を向けて、私も歩き出した。)
甘露寺さんって誰だ?そんなやつ知らないぞ。ごめん、今度説明するから……。(……忙しい1日だったなぁ。)