うーん、困ったなぁ。
○○には笑ってて欲しいんだけど。
(……だって私、師範がいないと、)
(口に出すと、夢で見たあの光景が鮮明に甦ってきて。)
(師範は目の前にいるのに、なんだか置いていかれることが現実味を帯びてしまうようで悲しくて。)
(口を噤んで泣くのを我慢していると、穏やかに笑った師範が手を広げてくる。)
(それが何だか堪らなくて、思わず胸に飛び込んだ。)
……大丈夫、僕はここにいるよ。
ね、聞こえる?
(しゃくり上げながら耳を澄ますと、師範の胸からトクトクと心音が聞こえてくる。)
(少しだけ足早なそれが心地よくて、身体を預けたままこくりと頷いた。)
(師範はゆっくりと私の頭を撫でながら、言葉を紡ぐ。)
……それにね、例え僕が先に死んじゃったとしても、○○を置いていくわけじゃないよ。
見えなくても、ちゃんと側にいるから。
前にも話をしたでしょ、来世でも会えるかって。
来世でも、その先でも、ちゃんと僕が見つけるよ。
だから大丈夫。
……○○のこと、1人にはしないから。
出来ません……。師範のいない世界で、生きていける気がしないんです。きっとずっと泣いてます。