(そう言って俯くと、動きを止めた師範が私の顔を覗き込んでくる。)
(だから、見ないで下さいって……ッ!)
(恥ずかしさに握られた腕を振りほどこうとすると、腕を引かれ抱きしめられた。)
(……師範?)
……ごめん。
○○が泣きそうな顔して立ってたから、どこか怪我でもしたのかと思って慌てちゃった。
大丈夫?怪我はしてないんだよね?
(はい、怪我はしてません)
(でも、髪が……、)
そう、良かった。
僕は○○が怪我をしないで、無事に帰ってきてくれるだけで充分なんだよ。
……でも、髪は女の人の命って言うもんね。
気にしてたんだよね、気付かなくてごめん。
(あの、私、こんなみっともなくて可愛くない姿を師範に見られたくなくて……)
(そこまで言うと、またじわりと涙が滲んだ。)
(別に自分のことを可愛いだなんて思ってるわけではないけど、師範の前ではそれなりの格好でいたい。)
(師範には、少しでも可愛いって思われたいから。)
ねぇ、一緒にしのぶさんの所に行こうか。
大丈夫。ちゃんと整えて貰おう。
また髪が伸びるまで一緒にいるから、大丈夫だよ。
(そう言うと師範は、私の手を引いて歩き出した。)
み、見ないでください……