(言葉を交わさないまま、お屋敷についた。)
(帰り道は、無言のまま早足に歩く師範について行くのが精一杯で。)
(こんな時いつもなら立ち止まって、「ごめんね、少し歩くのが早かったね」なんて、笑って手を引いてくれるのにとか現実逃避のように考えたりして。)
(お屋敷についても私の方を見てくれない師範が怖くて、私の存在が無くなってしまったみたいで悲しくて。)
(まだ呼吸も整わない身体で、何とか小さくお礼の言葉を紡いだ。)
(すると、部屋に向かっていた師範の歩みがピタリと止まり、くるりと此方を振り向いた。)
(師範の顔を見るといつもとは違う無表情で、それでも瞳からは抑えきれない怒気が滲み出ていて。)
(ヒッ、と小さく悲鳴を上げると、そのまま師範は近付いてきて遠慮なく私を床に引き倒した。)
(いッ、!)
(ガンッと私が頭を床に打ち付けた音が、誰もいない屋敷に響く。)
(薄らと目に涙が浮かぶが、それを見ても師範は表情1つ変えなかった。)
……ねぇ、何ノコノコあんな奴らに着いてってるの?
腰まで抱かれちゃってさ。
何?薄暗い路地裏に連れ込まれて、期待でもしてた?
(する、と師範の手が私の太ももから腰を撫で上げる。)
(擽ったさに思わず身をよじると、師範の口から呆れたような笑いが漏れた。)
……やっぱり期待してたんだね。
僕の継子はこんなふしだらな子だったの?
今まで優しくしすぎたかな。
(スッと細められた目には、昏くて鈍い光が宿っていて。)
(その瞳に見つめられたら、私は何も出来ずに、大人しく師範の下に敷かれているしか無かった。)
……あぁ、そんな○○は僕如きじゃ満足出来ないよね。
こんな子供より、大人の男のがいいかな。
どうする?そういう泣きそうな顔して街の路地裏にでも居たら、誰か拾ってくれるんじゃない?
連れて行ってあげようか。
(にこり。と笑った師範の顔はいつもと同じはずなのに、声色だけば震え上がるほど冷たくて。)
(あぁ、なんで私はあの時抵抗しなかったんだろうなんて、遅すぎる後悔が頭をよぎった。)
……しはん、そんな顔させちゃって、すみません、(頬に手を伸ばす)