紙飛行機を折っていると、いつの間にか師範が傍に立っていた。

『何それ、紙飛行機?』
(はい。前に師範が作ってくれたので、紙飛行機を見れば思い出してくれるかと……)

覗き込んでいる師範は、『ふーん』と呟くと、
傍にあった紙を手に取り器用に折り始めた。

『思い出しはしないけど、紙飛行機なら作れるよ。』

出来上がった紙飛行機は見覚えのある形をしていて、やっぱりこの人は師範なんだなぁとぼんやりと思った。

『……はい、これ。』

考え込んでいると、目の前に紙飛行機を差し出される。

『作ってるくらいだから、好きなんでしょ?』
『多分よく飛ぶよ、それ。』

(いや、ですから作ってたのは……、)
(それに、貰っちゃっていいんですか?)

私がそう返すと、師範は首を傾げて、私の作った紙飛行機を指さした。

『じゃあ、代わりにそれ頂戴。』
(え、多分これそんなに飛びませんよ、)
『別にいいよ。』
『あ、ついでにそれに君の名前書いといて。』
(名前ですか?)
『うん。書いてもらっても忘れるだろうし、紙飛行機自体忘れるかもしれないけど。』


——○○。

私が名前を書いて渡すと、師範は暫くその歪な紙飛行機を眺めていた。

☆紙飛行機を折る