『……行くって何処へ?』
『君の居場所はここじゃないの?』


そう言われ、言葉に詰まる。
モヤモヤと霞のかかった頭で、必死に考えを巡らせた。

(確かに此処は、幸せで、師範の隣で笑っていられて……)
(命を掛けて戦わなくてもいい、理想の世界で。)
(ずっと、此処にいたいと思ってた。)

(でも、それでは駄目だと思ったんです。)
(それは、私の、私達の目指した本当の平和じゃないから。)

(私はいつの日か師範と約束した、夜でも安心して手を繋いで歩ける、そんな世界を作りたい。)


そう言った瞬間、いつかの温もりを右手に感じた。
……あぁ、私の大切な人。早く会いたい。この人の元に帰りたい。
そう思うと、今までの記憶が一気に押し寄せ、頭の中の霞を晴らしていった。



『そう、思い出したんだね。』
☆……師範、私、行かなくちゃいけない所があります。