(そこまで聞いて、思わず扉を飛び出す。)
(廊下に出ると、扉の脇に座りんだ師範と目が合った。)
(一瞬驚いて丸くなった目は、ゆっくりと細められ優しい眼差しで私を見つめる。)
(それを見て、酷く泣きそうな気持ちになった。)
(師範じゃないと、無一郎さんじゃないと嫌です……。)
(ごめんなさい。師範は何も悪くありません、私が意地を張ってしまったから……。)
(目に涙が溜まり思わず俯くと、下がった頭をゆっくりとあやす様に撫でられた。)
○○、最後まで聞いて。
……君は、他の人の所に行った方がいいんじゃないかって思ったんだ。
それは本心だよ。
でも、色々考えている内に、頭に浮かぶのは笑ってる○○の姿ばっかりでね。
……あぁ、この笑顔が向けられるのが僕じゃ無くなるのは嫌だなぁ、って思ったんだ。
だから、これは僕の我儘。
……僕は、悪い師範だね。
他にもっといい道があるのに、君の背中を押してはあげられない。
でも、僕はこれから、君の師範としてもっと成長出来るように頑張るよ。
僕の元で学んで良かったって言って貰えるように努力する。
だから、これからも僕の継子でいてくれますか。
(……はい、これからも、あなたの継子でいさせてください。)