鬼になってしまった…
記憶が曖昧で何故自分が鬼になったのかが思い出せない
鬼と戦い負けた…そこまでは思い出せる。
だが、その後が思い出せない…なぜ、どうして鬼になってしまったんだ…
いや、考えても意味はない…今すべきことはさっさと自分の頸を斬り落とすこと……それだけだ
分かっている…分かっていても…出来ない、何度も何度も頸に刀を押し当てたが切断には至らなかった
だって…死にたくない、なんで俺は死ななきゃいけないんだ…しのぶに会いたい、死ぬ前にせめて一目だけでもいいから
駄目だ、そんなことは駄目だ…鬼になった姿など見せることが出来るはずがない
こんな姿を見たらしのぶはきっと悲しむ…そんなこと出来ない
分かってはいる、分かってはいても…死のうと思い、刀を頸に当てるたびにしのぶの顔が目に浮かぶ…
必ず帰ると約束した…カナエさんの仇を討ったら、晴れて夫婦になろうと約束したのに…なのに俺はこんなところで死ぬのか…
誰かを庇って死ねればよかった、誰かを守って…戦って死ねればよかった、その覚悟はあった、戦いの中で死ぬ覚悟はあっても……自分の頸を落とす覚悟は…出来てなかった
(涙が出る、ボロボロと涙が溢れ出る、嗚咽を漏らしながら懇願する)
誰でもいい…誰か、俺を殺してくれ……自分では…出来ない
駄目だ、違う…甘えるな、人に頼るんじゃない…俺は今、ここで死ななきゃいけないんだ…俺が生きて戻れば例え自らの意志で鬼になったわけではなくてもみんなに迷惑がかかる
もしかしたらしのぶに何かしろの罰が与えられるかもしれない…切腹は無いにしても……俺のせいで迷惑がかかる
分かっていても…何度も自問自答し……自分は死ぬしか道がないことが分かっていても、なかなか死ねなかった
柱になりたかった…称号が欲しかったわけじゃない…しのぶと並んで戦いたかった、しのぶを守りたかった…
あぁ…そうだ、鬼が
そう言えば、さっき倒した鬼達で49体……そうだ、そうだった。
あと1体で…俺は柱になれた……いや、なるんだ
今から鬼を倒して…俺も柱に……
ごめんなさい、カナエさん…約束守れなかった
ごめん、しのぶ…幸せにしてあげたかった、二人で幸せになりたかった
でも…ごめん、もう無理だから……せめて幸せになってくれ
頸を斬り落とす頸を斬り落とせない