(●●の死から1週間後)
炭治郎:…善逸、そろそろ任務に行かないと
善逸:行かない…行きたくない、俺が行ってなんになるんだよ。
炭治郎:善逸…
伊之助:ほっとけ、ほっとけ…こんなやつに構っても時間の無駄だぜ。
炭治郎:…善逸、先に行ってる。
善逸:……(●●さんが亡くなってから1週間が経った、みんなは少しずつ前に進もうとしている)
善逸:(でも…俺にはそんなのできない…今でも、●●さんを背負っていた時の感触が背中に残っているような気がする)
善逸:(●●さんが死んで…何の音も聞こえなくなって、動かなくなって、どんどん冷たくなってった時の感触が…)
善逸:(あの時…俺が●●さんの代わりに死んでいたら……)
(ぐぅ~と善逸の腹が鳴る)
善逸:(こんな最悪な気分なのに…腹は空く、俺の身体は生きたがっている、そう思うとすごく情けない)
善逸:(働かざる者食うべからず…そう思っても、空腹に負けてしまう…こんな自分が嫌になる)
(そっと部屋から出て食べ物を探しに行く)
しのぶ:あら、善逸君…任務には行かれなかったんですか?
(部屋を出ると荷物を抱えたしのぶとばったり出会う)
善逸:しの…しのぶさん…あ、あの…俺……俺……ごめんなさい、ごめんなさい、しのぶさん…
しのぶ:…なにが、ですか?
善逸:俺…あの時……
(再びぐぅ~と腹が鳴る善逸)
善逸:あっ…うぅ…
しのぶ:ふふっ、お腹が空いてるんですね。丁度私も一息つこうと思っていました。いつもの場所にお饅頭がありますから取ってきてもらっていいですか?私はお茶を入れます。
しのぶ:今日はいい天気ですね。
善逸:そう…ですね…あの、その荷物ってもしかして
しのぶ:えぇ、●●君の遺品です。あの人部屋を全然片付けていなかったので整理するのが本当に大変で…しばらくかかりそうです。
それに伊之助君に本をあげる約束をしたらしいですが…なにしろ、彼の蔵書のなかにはいかがわしい本も少なくありませんから…取り敢えず、伊之助君が読んでも大丈夫そうなものを見繕っていたんです。
善逸:そうだったんですか…大変ですね
しのぶ:本当ですよ、死んだ後でもこんなに苦労を掛けさせて…今度会ったら文句の一つも言ってあげないといけませんね。
善逸:(●●さんが死んでから、しのぶさんの音は大きく変わった…常に無音が聞こえてくる、感情の全てを押し殺している人の音だ…)
(でも、どんな人だってそんなに長い時間感情を閉ざすことは出来ないはずなのにしのぶさんは一週間以上も…これも俺のせいだ…)
しのぶ:…善逸君、あまり背負い込まないでください。
善逸:えっ…
しのぶ:貴方は彼の死について責任を感じたいるようですが、私達は鬼殺の剣士です。彼だって覚悟はできていたはずです、だから…貴方がそんなに背負い込む必要はありませんよ?
善逸:…違うんです、俺のせいなんです。俺のヘマのせいで●●さんは傷を負って…それに俺が…俺が…
しのぶ:善逸君…なにがあったんですか?強要するつもりはありません、ですが知りたいんです。彼が最後になにを想ったのかを…
善逸:俺…あの時●●さんを背負って蝶屋敷まで運ぼうとしたんです。せめてしのぶさんに会わせたくて…
しのぶ:炭治郎君達から聞きました、彼の為に頑張ってたんですよね。でもあの日は私も任務で蝶屋敷にはいなかった…仮に間に合ったとしても私には…
善逸:それだけじゃないんです…あの時の●●さんは覚悟を決めてたのに…俺が変に希望を持たせちゃったせいで、●●さん…死にたくないってしのぶさんと会いたいって……泣いてたんです。俺のせいで…あの人の覚悟を崩しちゃったんです。
それなのに●●さん…最後の最後にありがとうって言ったんです…俺には礼を言われる価値なんてないのに!
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