●●君からこの座敷牢に閉じ込められてもう1週間…
蝶屋敷のみんなや鬼殺隊には彼が上手く説明しているだろう、せめてみんなに心配かけたくない…
座敷牢と言ったが、ここには生活に必要なものどころか、私が欲しいと言ったものはすべて揃っている。
薬を調合するための機材や退屈しのぎの小説や雑誌などもあり、一見するととても牢の中とは思えない様相だ。
だからこそ、歪さがより際立つ…まるで今の彼の心を現しているように感じる。彼の心は私を中心に回っている。
しのぶに愛し愛されたい、しのぶに傷ついて欲しくない、しのぶに死んで欲しくない、しのぶを大切にしたい、しのぶを誰にも奪われたくない、しのぶに嫌われたくない…そうやって私のことだけを考えているうちに心をすり減らしていった。
だから、こんなことをしでかしてしまったのだろう
…私がここから出してと言えば、きっと彼は出してくれる。
そもそも、この牢に鍵はかかっていない
物で溢れた鍵の無い牢、その中にいる私…この歪な空間が彼の心のあらわれなのだろう
多少の不便さはあれ、この生活にはだいぶ慣れた。お陰で新しい薬や毒の研究に勤しむことができる。
とはいえ、いつまでもこのままでいいはずがない…
ここにいると…この牢に入ってから、彼との心の距離が離れていく気がする、お互いにお互いを欲しているのに…
どんどん心がすれ違い、離れていく…以前にも彼と離れたとはあった、当時はそれが正しいことだと思っていた。でも、無理だった…
私は彼と離れたくない、もう二度と離れるのは嫌だ。でも、ここを出れば彼の心の拮抗を崩すことになるかもしれない。
それが私がここを出て行かない理由、私が縛られているから…体をじゃない、私の心を彼が縛っているから、私はここに留まっている
私がここから出ていけば、彼の心が本当に壊れてしまいそうで、それがとても恐ろしい
いや、もしかしたら逆なのかもしれない、私が彼の心を縛っているから彼はこんなことをしているのかもしれない。
この生活に不満があるとするならばそれは…彼が毎日のように傷を負って帰ってくること
私が監禁されているとバレないようにするためでもあるんだろうが、私の分も鬼狩りの仕事を頑張っている。
私の為に、私の代わりに、私のせいで…彼は傷だらけになる
玄関の方から音がする、彼が帰ってきたようだ…今日も血の匂いがする、鬼のじゃない
また傷ついて帰ってきた。
…私も彼と同じだ、彼が私にそうしたように、私だって彼をそうしたい
彼の傷つく姿なんて見たくない、●●をどこかに閉じ込めてしまいたい。
それは…また今度にしよう、まずは彼の傷の手当てをしてあげなくては…

しのぶ:おかえりなさい、●●君