(カナエさんの位牌の前でしのぶが泣いていた、気のせいなのかもしれない、後ろ姿だけで涙は見えなかったが…俺にはしのぶの涙声が聞こえた)
(声をかけようとも思ったがかける言葉が浮かばず、その場に立ち尽くした)
アオイ:しのぶ様~こちらですか?
(アオイの声に振り返ったしのぶと目が合った…その瞳は少し赤くなっていた)
しのぶ:●●君?!…いつから、そこに…?
(困惑するしのぶの質問を無視してとっさにしのぶの顔を隠すように抱きしめ、包み込んだ)
しのぶ:な、なにを…
(しのぶを抱きしめるのとほぼ同時にアオイが部屋に入ってきた)
アオイ:失礼します、って…●●さん?あっ、しのぶ様も一緒ですか……どうやらお邪魔みたいですね…仲がいいのは結構ですが場所は選んだ方がいいですよ?
●●:仲の良い所をカナエさんに見せてるだけだよ。
アオイ:はいはい…もうすぐ晩ご飯が出来ますから、ほどほどにお願いしますね?
(そう言ってアオイは部屋を後にした)
しのぶ:どういうつもりですか、アオイの前であんなこと…
(まだ僅かに濡れているしのぶの目元を指で拭きながら答えた)
●●:見られたくないと思って…
しのぶ:…それにしてもです、もう少しましな方法があったのでは?
●●:かもしれない…あの時はとっさだったから…
しのぶ:…アオイだけならまだしも姉さんの前でもあんなことして…
●●:きっと笑って許してくれるさ
しのぶ:その笑われるのが嫌なんです。
●●:そっか…ごめん、いい考えだと思ったんだが
しのぶ:…ふふっ、ほんと勝手な人なんですから
(むっ、と顔をむくれさせながらも…どこか楽しそうな様子を見て安心した、今は…少なくとも今は大丈夫だと思った)
しのぶ:…●●君、確かにいい考えかもしれません。時と場合によりますが…また誰かに見られそうな時は隠してもらってもいいですか
●●:もちろん…止めることは出来なくても、隠すことくらいなら…いくらでもするよ
しのぶ:ありがとう…●●君。
(今はまだしのぶの涙を止められる存在にはなれない…だからいつか、そんな存在になりたいと誓った)
涙を隠す