蝶屋敷に出掛ける為に●●君は医者鞄と革のトランクに昨晩二人で作った薬を入れていた。
しのぶ:少し作り過ぎましたね…そんなにいっぱい持てますか?
彼は微笑みながら大丈夫と答えた
しのぶ:でも…かなりの荷物ですし、それに私だって
彼はまた微笑みながら答えた、大丈夫…それにしのぶは荷物じゃないよ、と
●●君らしい答えだと思い、微笑み返した
荷造りも終わり最後に私の身体におんぶ紐を通そうとした時、不意に無いはずの左手に痛みが走った。
突然のことに思わず声が漏れ、顔を歪ませてしまった。
●●君が心配そうに腕を撫でてくれる
しのぶ:大丈夫です、傷が痛むわけではありません…おかしなものですね、無いはずの手が痛いんです。
私の言葉を聞いて、彼は少し考えこむと本来手があるはずの部分を触り、撫でる真似事をしながら痛むのはこの辺かな?と苦笑いしながら言った
もどかしい、幻肢の痛みがじゃない…痛みを感じることは出来るのに、●●君の温かさを感じないことが歯がゆい
しのぶ:●●君…それもいいのですが、真似事ではなくちゃんと触ってください
●●君は優しく腕を撫でたり揉んでくれた…それでも痛みは引かなかった、でも…大丈夫、所詮は幻の痛み
彼が与えてくれる本物に敵うはずがないのだから
幻肢の痛み