朝、目が覚めると隣で寝ているはずの彼の姿が見えなかった。
朝食の用意をしてくれているのかな?
以前なら、とっくに起きている時間なのに柱を辞めてからどうも気持ちが緩んでしまっている…
これじゃダメだなっと思いながらも彼が起こしに来るまで寝てようかなと思っていると、突然彼のせき込む声と物が倒れ食器が割れるような音がした。
大丈夫だと思いながらも不安で思わず彼●●を叫んだ
しのぶ:●●君?●●君…大丈夫ですか?
返事はなかった…そんなはずない、そんなことはない…そう分かっていても不安になる、どうしようもなく不安になった…
彼の姿を一目確かめたくて、布団から這い出た
太ももから先の無い両足では歩くことは出来ない…二の腕から先の無い右腕と手首から先の無い左腕で必死に体を引きずった
大丈夫…私の考えすぎだ、最近は●●君の身体だってだいぶ良くなってきた、だから大丈夫、なにもない…そう言い聞かせながらも不安になって彼の名前を叫んだ、自分でも嫌になるくらい情けない声だった…
しのぶ:●●……●●!
私の声に驚いたのか、ドタバタと割烹着姿の彼が現れた
●●:どうした?!なにかあったか?
しのぶ:あっ…いえ、なにもありません。ごめんなさい…大きな音がして驚いて…少し不安になってしまって…
●●:そっか、ごめんごめん…ちょっとつまみ食い、もとい味見してたらのどに詰まらせちゃって、でびっくりして皿を落としちゃってさ…だから大丈夫、しのぶが心配するようなことは何もなかったから…
そう言って彼は優しく微笑んだ
しのぶ:そうだったんですね、もう…驚かさないでください。
彼の笑顔を見て安心した、ほら何もなかった、私の考えすぎだった。
●●:取り敢えず、もうすぐ朝ご飯が出来るから、しのぶはまだ寝てていいよ。ほら布団まで運んであげますよ~
彼に抱きあげられ、彼と体が重なって私は自分のしたことの愚かさに気が付いた、私のあんな声を聴いて彼が心配しない訳がない…自分の状態など構わず私のもとに駆け付けてきてくれる
激しい動悸、荒い呼吸を彼は必死に抑えて私に悟れまいと振舞っていた。
たぶん、彼は突然の発作を起こして休んでいた…それを私があんな声で呼んだから、私がそうであったように必死で私のもとに駆け付けたんだ
また私は彼に迷惑をかけてしまった、本当は立っていることすら辛いはずなのに…私に心配をかけまいと精一杯笑顔を作る彼を見ていると、私は自分自身を許せなくなる。
私が生きている限り、ずっと迷惑をかけ続ける…
しのぶ:●●君…ごめんなさい
●●:なにが?しのぶが謝ることなんてなにもないよ。悪いのは俺だから……俺のせいで
しのぶ:そんなこと…
●●:あっ、いや…ほら、俺が朝っぱらから騒がしかったからさ…
しのぶ:そう…ですね、ほんとあなたはおっちょこちょいなんですから…ほら、私のことはもういいです、まだ朝食の支度が残っているんでしょ?
●●:うん、すぐに出来るから、まってて…
彼が部屋を後にするのを見送る…彼が部屋を出て私から見えなくなってすぐに彼のせき込む声と荒い息遣いが聞こえた…でも、私はなにも聞こえないふりをした
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