●●君が死んでから数か月
少しだけ彼のいない生活に慣れてきた…いつまでも落ち込んでいる訳にはいかない
この子の為にも…私のお腹には彼の子供がいる
でも、私はこの子を産むべきなんだろうか…結婚もしていないのに身ごもった私をふしだらだと陰口をたたく人もいるが…そんなことは別に気にしていない
私はこの子を産みたい…彼の子供だから、彼が残した大切な宝物なのだから、私はこの子を産んであげたい
だが、私が今まで飲んできた毒がこの子にどんな影響を与えているか分からない…五体満足で産まれてくるのか分からない
それでも産みたいと思うのは私のエゴなんだろうか
この子を産んだとして…私は満足に育てることが出来るのだろうか
私は姉さんと●●君の仇を討ちたい、その為には子育てなどしている場合なんだろうか
子を身ごもったままでは戦うことは出来ない…産んでからも乳離れするまで毒を摂取することも出来ない…
私が戦えない間はカナヲ達に負担をかける、もしも私の代わりに任務に就いたカナヲの身に何かあったら…
こんな弱音ばかりでは姉さんも●●君もきっと怒るだろう…怒られたい、二人に叱って欲しい。
でも、駄目なんだ…だって二人はもう居ないから
この子にも私の業を背負わせることになるのかもしれない…もしも私が二人の仇を討てなかったら…代わりにこの子に……いや…それは駄目。この子には戦いの無い世界で生きて欲しい
ちゃんと産んであげられるか分からない、産んだとしてもこの子を幸せにすることが出来るか分からない…それならばいっそ……いっそ
なにを…私はなんてことを考えてたんだ……一瞬とても残酷なことが頭を過った。
今の……今の私は少し疲れているだけなんだ…妊娠した女性はみな程度の差はあれ精神的・肉体的に不安定な状態になると聞く、私の場合もきっとそうに違いない…
この子が無事に生まれたら…私はちゃんと普通の母親のようにこの子に接して愛情をもって育てることが出来るはず
できなきゃ駄目なんだ…●●君の為にもしなきゃ駄目なんだ。
この子は彼との子供なんだから私が責任をもって育てないと…
それすらできないのなら…私は何のために……
こうやって何日も何日も自問自答を繰り返しながら、何の答えも出せず、何の覚悟も出来ないまま私のお腹は日々大きくなり続けている。
(そして、彼は夢に現れた)