(最初で最期の景色を眺めつつ、重力に任せ砂の上にゆっくりと体を横たわらせる)
(絶え間なく寄せる波面に輝く光がとても幻想的で、ずっと眺めていたい気分になる)
(しばらくすると涙が頭の中に溜まるような嫌な感覚が全身を襲う)
(ふと何気なく指同士を滑らせると、ざらりと削れ細かい自分が水中を漂い、そして消えていく)
(「死」が間近に迫ってきている)
(初めて味わう「死」の恐怖)
(けれど動くことはできない。動いたら今の醜い自分が見えてしまう)
(二度と彼の顔を見ることは、できないのだろう)
(波がそよぐ風のように暖かく感じられ、それだけに集中しそっと目を閉じた)
(他に何も考えたくなかったから)
君…!(目を開けると、居るはずの無い彼がそこに居た)
(苦しそうな彼の表情とは裏腹に、なぜか笑みが零れた)
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