カンゴーム:なあ、なんか割れるような音が聞こえなかったか?書斎の方。
(そう言ったのは僕の片割れである双子のカンゴーム)
(僕らはラピス…もとい、旦那様との遠征を終え、大旦那様に各国との協議内容を伝えてきたばかりだった)
(旦那様は顔を見たくないからと先に書斎に戻られていたはず)
(嫌な予感が頭を過る)
ゴースト:行きましょう。
(あと数歩で部屋につく、といったところで旦那様が部屋から出てこられた)
(こちらに気付き振り向かれた表情は普段の余裕のある笑みは無く無表情で、少し動揺しているようにも見えた)
カンゴーム:ラピス、どうかしたのか?
(カンゴームは昔の癖で敬称と敬語を忘れる)
(いつもなら咎めるが、自身も気になっている内容だったのであえて触れずに旦那様の返事を待つ)
ラピス:…何でもないよ。
それより医者を呼んでくれないか。君が怪我をした。
(そう言い残し旦那様は足早にどこかへと向かわれた)
(状況が分からないが、カンゴームに伝達係を頼み自分は部屋へと入る)
(中では数人の従者がしゃがんでいる君様を取り囲む構図で、慌てた様子で静止の言葉を喋っていた)
(君様は彼らの腕を払いのけ、必死に床にある何かを集めている)
ゴースト:君様…。
(声をかけると君様はこちらを振り向かれた)
(その眼には涙が溜まり、今にも零れ落ちそうなほどだった)
(さらに近づき手元を見て自分の目を疑った)
(彼女の手は真っ赤な血に染まり、大理石の白い床や彼女の着ている服にまで付着していた)
(手元には大小様々な陶器の欠片があり、それを拾い集めていたのだと理解する)
(言葉を選ばなければ、今の彼女には雑音にしか聞こえないだろう)
(慎重に言葉を紡ぎ出す)
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