(賑わいを見せる街を眼下に、僕はビルの屋上の手すりに降り立ち羽を休ませる)
(眼球を右へ左へと動かし、より良い"獲物"が居ないか吟味する)
(今回の仕事は一人前のインキュバスとしての認可が掛かっている)
(俗にいう"最終試験"だ)
(普段は精を少し頂くだけ。けれど最終試験では相手、獲物である人間の精を搾り尽くす…つまり殺すことが条件になる)
(満腹という感覚を掴んだ時、僕達は加減を覚える)
(そして餌である人間の大切さを認識する為に必要な行為。そういった考えの元出来た昔からの制度らしい)
(正直抵抗が無いと言えば嘘になる。でもこれを達成しなければいつまで経っても下っ端の見習いのままだ)
(…あの子、顔が赤くて足元が覚束ない)
(酔っ払いは手っ取り早い。騙しやすいし何よりすぐに寝てくれる。見た目からして一人暮らしな感じもする。条件は悪くない)
(気の毒だけど、運の尽きってやつだ。最終試験の獲物はあの子にしよう)
(羽と尻尾、角をしまい、重心を前へとずらした)
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