(目覚ましが鳴る音で眠りから覚め深く息を吸う)
(久しぶりにアラーム音で起床した。今までは悪夢続きで飛び起きることが多かったのに)
(ふあ、と欠伸をしながら音の鳴る後頭部へ手をやる)
(……)
(………なんだこれは)
(サラサラとした何かが、スマホへ伸ばした指先を阻んだ)
んー…うるさいなぁ僕朝は苦手なんだよ…。
(視線だけずらすと緑色の毛が見えた。知らない誰かが布団の中に居る)
(声にならない声を上げベッドから転がり落ちると、緑の毛がもぞもぞと布団の中へ入っていき…ばっとシーツがめくれ上がった)
だーっ!もーうるさいんだって!君!このうるさいの止めてよ!
昨日は精貰うどころじゃなかったから魔力足りないのゆっくりさせて!
(なぜか私の名前を知っている大学生くらいの男の子が、ここにいるのはさも当たり前とでも言うように指図してきた)
(唖然としているとスマホに手を出されそうになったので慌ててベッドに乗りアラームを止める)
(それに満足したのか目を4、5往復擦った後またシーツを目深に被り寝る体制を取りだした)
(害は無さそうだけれど完全に不法侵入な彼に対しどうしたものかと考えていると、シーツから爪の長い腕が伸びてきて手を掴まれた)
(声を上げる暇も無く引き込まれ、先ほどの彼と顔を対面させられる)
(外が明るいせいで薄暗くともよく見える顔は、整っているけれど目が猫のように鋭い)
(薄く開く口からは犬の犬歯のように鋭い歯が並んでいる)
(怯え震えているのが伝わったのか、手を握っていた力が弱まり離れた)
(その直後頬に手を添えられ顔が近付き口づけられた)
(突然のことにもがいていると、唇を離した目の前の人と視線が絡み合う)
何拒んでるのさ。そういう約束だったじゃん。
(謎の言い訳に反論する間もなくキスを再開され、彼が満足する頃には足腰が立たない程ぐったりさせられた)
(追い打ちをかけるように説明された昨晩の出来事に、記憶が戻りつつもただただ呆然とするばかりだった)
♂翌朝隣で眠るフォスに驚く