(久しぶりに一人の時間が出来たのに、仕事帰りに彼の働いているキャバクラの前の道を通るルートを選んで来てしまった)
(きっとあのVIPROOMで男にガッポリ貢がせているのだろう)
(そう思いながら店の前を通り過ぎると、人ごみの中、目の前から男の人と腕を組む見慣れた姿を見つけてしまった)
(同伴というものだろうか。初めて見る彼の仕事姿に驚いてしまい視線を外すことができない)
(髪はハーフアップに結わえてあり、服は一見露出が少ないものの、ロングスカートのスリットから覗く肌色の長い脚が艶めかしい)
(男の人と楽しく会話をしているようで、リップが塗られた形の良い唇が何度も弧を描く)
(なんだか見てはいけないものを見てしまったような…それなのに罪悪感ではなく嫉妬にまみれた自分の感情に疑問を持つ)
(ふと視線を感じ意識を戻すと、彼が不思議そうな表情でこちらを見つめていた)
(こんなところで声を掛けるわけにはいかない。すぐに視線を逸らし早足でその場を立ち去った)
(名前を呼ばれた気がしたが、それも無視して家へと向かった)
(その夜はフォスが帰ってくるまで悪夢を見続け、眠れたのは夜が明けてからの数時間だけだった)
♂ラピスに対してぎこちなくなる