「部活見学してくれなくなって段々会わなくなって…中学の上手くいかない時もずっと傍にいてくれた○○ちゃんが避けるってよっぽどじゃん、とか。嫌われたんだなって思ったし、いつも俺のために動いてくれる○○ちゃんを解放してあげないといけないって……一度会ってちゃんと話すべきだったのに確かめることが怖くてさ、自分から会いに行けなかった」


不器用に口の端を持ち上げて情けない笑みを浮かべてあなたの肩を掴む及川の指先は、微かに震えている。

「…俺はバレーが何より大事で今は楽しくプレーできてるし充実した毎日を過ごしてて幸せだって思ってたのに、どこか満たされなくて……ずっと考えてたんだ。○○ちゃんと離れてから寂しくて苦しかった。ああ、やっぱり俺は○○ちゃんが近くにいないとだめだって気づいたんだ」


思わぬ本音に驚いた風に瞳の縁を丸くして喜びに胸を震わせた。寂しい、一緒にいたいと思っていたのは自分だけではなかったのだと。


「俺には○○ちゃんが必要なんだ…情けないと思われてもいい、嫌われてもそれでもずっと一緒にいたいんだ。離れていかないで俺の傍にいて欲しい」


未熟な不安を拭い去るように何度も頷きながら「うん」と返事を返し、真っ直ぐ告げられた思いに応えるようにもう一度及川に抱きつくと先程よりも力強くぎゅうっと抱き締められた。

甘えるようにあなたの頭に頬を預けて擦り寄せる及川に顔を綻ばせた。


後々聞いた話で告白を受けて彼女がいたのは本当だったらしくあなたを忘れなくてはいけないとヤケになってしまい酷く後悔したらしい。相手にも申し訳なくてそれを知った岩泉からガチめの説教を食らいしっかり謝罪したとのこと。
一緒にお昼を食べたこともなければ一緒に帰ったこともなかったらしい。彼女に見向きもしないバレーばかりの及川に愛想を尽かすとすぐに別れ話となった。

……とんでもない話に引きながら思わずぺしっと及川の頭を叩いておいた。

★高校時代…3