「あのーちょっといいですかぁ」
(今日は一般のお客さんも見学可能、県内の高校を集めた大掛かりな練習試合。コールドスプレーやテーピング、タオルなど荷物を纏め忙しなく動き回り時間が空いたのでお手洗いを済ませておこうと歩いていた所で後ろから声をかけられた)
(試合を何度か見に来てくれている宮兄弟のファンの子だ。見覚えがある)
「マネージャーですよね〜稲荷崎の。いっつも思ってたけど侑と治と距離近くない?」
「選手との距離感考えた方がいいわよ!」
「マネージャーのくせに」
「見てて不愉快なのよ」
(矢継ぎ早に浴びせられた言葉の数々に身に覚えがなく、言い返すことも出来ず思わず固まってしまった。気づかぬうちに周りを不快にさせるほど近づき過ぎたのだろうか、謝るべき?……途端、羞恥に表情が彩られて黙りを続けていれば痺れを切らしたファンが声を荒げた)
「何とか言いなさいよ!」
「そうよそうよ!」
(どうしよう…。
思わず後ろへ後退りポスッと背中に小さな衝撃を受けた。振り返るとそこにはたった今話題にあがっていた侑と治の姿が)

侑「楽しそうな話してるやん。俺らもまぜて〜〜えーと何やったか…○○さんと距離近いって話か。近かったらお前らに何か関係あるんか。なんの権利があってどんな立場でモノ言うてるん?もちろん納得できる理由があっての事やんな?」
(抑制しきれない怒気を含み淡々と問いながら負の印象をファンに向ける侑。途端にファンの二人は微弱に震え始めた)

治「マネが、というより俺らが近づきたくて近づいて行ってるんやけどな。こんな風に」
(治に肩を抱かれてファンの二人から自然と遠ざけられた。その隙に侑が背中で隠してくれる)
治「選手とコミュニケーション取ったり、サポートするのもマネの仕事の一つやろ。近づいて何が悪いねん」
侑「まあ、お前らとの距離は一生縮まること無いから安心してな。わかったら黙って観客席戻るかおとなしく家帰るか選び」
(咎められ冷たい視線に何も言えなくなったファンは慌ただしく走り去って行った)
(どうしようファンが減ってしまう…!と表情に出ていたのかあなたの顔を見て二人が同時にため息を吐いた。さすが双子、タイミング一緒)

侑「○○さん今絶対いらん事考えよったな」
治「プレーしてる俺らや稲荷崎の応援ならともかく個人的なファンが減ろうとどうでもええ…」
侑「大事なマネに危害加えるヤツなんかいらん!」
治「いつでも俺らが助けるんで頼って下さいね」
(交互に頭を撫でられて安心して思わず二人にぎゅぅっと抱き付くけど腕が回らず変な形になってしまい、挙句「俺が追い払ったようなものだから俺が抱き付かれるべきや!」と侑が治を押し出してしまいそのまま喧嘩に発展してしまった)