(部活終わり。雨がひどくなる前に、と気を遣って早めに帰してくれた黒尾には申し訳ないが傘が無いことを言い出せず。送り出してくれた部員に手を振りながら昇降口でどうしたものかと悩むこと数分)

(しとしと雨が降る中、意を決して飛び出してはみたが、ものの数秒で断念。建物の屋根に避難する羽目になった。このまま夜通し降り続くらしい……今更見た携帯の天気予報を睨んでいると、小さく自分を呼ぶ声がした)


○○……やっぱり。傘なかったんだね。


(制服が濡れて若干透けているあなたの姿を見て眉根を寄せると鞄からタオルと赤いジャージが差し出される)
(素直に受け取ると、研磨はため息をついて傘を閉じ隣りに並んだ)


どうせ言い出せなかったんでしょ。あの時ちょっと様子が変だったから、傘ないのかなって……あー…うん、クロも気づいてたよ。先生に呼ばれてたから追いかけられないけど俺に行けって。言われなくてもそうしたよ。



服……いや、だから、その雨で………っ…ああもう!
そんな格好で誰かに見られたらどうするの。早くジャージ着て。それ替えのやつで着てないしタオルも新品だから。

家まで送る。

(ふい、と視線を逸らした研磨の目元が若干赤らんで見えたけれど指摘すると更に怒られてしまう気がしておとなしくジャージに袖を通した)
(相合傘で並んで帰ると研磨からする匂いと同じ匂いが自分からして照れ臭くて俯いてしまった)
@雨に濡れる