(部活後。片付けを終えて外へ出る。何やら話し声が聞こえてそちらへ顔を向けると、小柄で可愛らしい女の子と黒尾が向かい合っている姿が見えた)
(駄目だと分かりながら壁に背を向けて隠れながら聞き耳をたてた。すると、女の子が緊張したような震えた声音で「黒尾くんの事が好きです。付き合って下さい」と言葉が耳朶を打つ。ドキドキと心臓がうるさい…)
気持ちは有難いんだけど、今はバレーで手一杯だし…それに好きな子がいるんだ。危なっかしくて可愛くて目が離せないんだよ。そいつだけに優しくしてやりたい。だから付き合えない。
(迷いのないキッパリとした返事だった。「じゃあせめて友達になりたいから連絡先を…」と引き下がらずスマホを掲げる女の子の前にやんわりと手を出して制止させると、黒尾は困ったように笑った)
悪い。俺に気持ちが向いてるんだったらそれは友達として成り立たないだろ。変な期待させたくないし、何より好きな子に誤解されたくないから 連絡も出来ない。ゴメンな。
(しゅん、と肩を落とした女の子を慰める訳でもなく黒尾の方から立ち去って行った。それは変に優しくしない黒尾なりの気遣いだった)
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