「ここだな・・・」


俺は孤児院の前に立ち、建屋を見上げていた

中からは子どもたちの楽しげな声が少し漏れ出して聞こえてくる

まずはぐるりと建屋を一周回る

周りは草木が少し生い茂っているが、身を隠せるほどではない

これなら夜、遠めから見張りをするだけでも見つけられそうだ

全てのスキルを習得できる職業、冒険者の俺には「暗視」というスキルがある

これにより、暗闇でも昼間のようにハッキリ見えるのだ

まずは怪しい者について話を聞くため、そして見張りをすることも伝える必要があるので、孤児院に入り、話を伺うことにする

孤児院の中に入ると、10人ぐらいの子どもと、この街で有名なクルセイダー、ダクネスの姿があった


「おや、来客かな

ようこそ孤児院へ、何かご用でしょうか?」



ダクネスがこちらを振り向き、声をかけてくれた


「ええ、私は一端の冒険者でして、魔道具店のバニルさんから、夜、孤児院周辺をうろつく者の調査依頼を受けてやって参りました」

「それはそれは、有難い

実は私共も気にかけてはいるのだが、何せ怪しい者は暗闇に紛れて近づいてくるので、中々捕まえられず、困っておりました

この孤児院にはお金も無ければ高価な物も無いというのに、一体何の目的で来るのやら・・・」



ダクネスは困り顔で話してくれた

他に詳細を聞くと、ダクネス自身も何度か張り込みをしたが、どうやら怪しい者も暗視スキルを持っているようで、暗闇の中をすばしっこく動き回り、捕まえられないようだ

また、ダクネスの仲間のカズマというこの街でも有名な冒険者に頼んでも、『眠い夜に張り込むのはめんどくさい』と言われ、断られるとのこと


「バニルも気にかけてくれているようだな・・・

暗闇での活動となるが・・・」


「暗視スキルを持っているので、大丈夫ですよ」

「なるほど、とても心強い

冒険者殿、ぜひ怪しい者の素性を確かめてほしい」


「ええ、分かりました」


ダクネスはホッとした様子だ

ダクネスが子どもたちから遊び相手をねだられているので、今晩から見張りをすることを最後に伝え、早々に孤児院を後にした



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