バニルはそう言うと、陳列棚の隅にあった小さなペンダントを出してきた
雫(しずく)の形をした淡い水色の綺麗なペンダントだ
「これは魔力結晶を高密度で固めた物で、身に着けていると魔力が若干上昇する効果がある
これを爆裂娘にくれてやれば喜ぶぞ」
「おお!ありがとうございます!
それで、こちらはおいくらでしょうか?」
「100万エリスだ」
「高いわ!」
思わず怒鳴ってしまった
この世界で生活している限り、日本での通貨感覚とここはほぼ同じだった
つまり、100万エリス=100万円だ
「まぁそういきり立つな、100万エリスはただのシャレだ
30万エリスでどうだ?」
「ぐぬぬ・・・それでも、きついなぁ」
あのあまり美味しくないクッキーをくれためぐみんへのお返しで30万エリス・・・
こんなこと考える自分が少し嫌だが、思い切り損をしている
「ふむ・・・ならば、冒険者らしくいこうか
我輩が依頼するクエストを受け、達成してもらえばこのペンダントを報酬代わりにくれてやろう」
「おお!それがいいです!
それで、依頼とはどういったものでしょうか?」
クエストの報酬、これは冒険者らしくて良い
こういった物に憧れていることもあり、ワクワクしてくる
「ふむ、いい返事だ
依頼とは、孤児院の周りを夜な夜なうろつく輩(やから)の調査だ」
孤児院、それはこの駆け出し冒険者の街、アクセルにある
ここでは、家庭教師を雇うほど余裕がない家の子どもや、身寄りのない子どもが集まり、勉強したり遊んだりして暮らしている
「実は我輩、孤児院に通う子どもたちの見守り活動をしておってな
最近、夜、孤児院の周辺で怪しい者を見かけると通報があった
だが、我輩は主に朝夕の通学時にしかおらず、昼や夜はダメ店主に代わってこの店を見ねばならぬ
そこで、お客人にこの依頼をするわけだ」
「なるほど・・・夜、孤児院を見張り、怪しい者を見つけたら素性を確かめればいいのですね」
「ああ、そうだ
相手さえ分かれば、後は我輩が話をつけにいってやる」
「分かりました、そのクエスト受けます!」
「よし、頼むぞお客人!」
かくして俺は【孤児院周辺をうろつく怪しい者】という名前のクエストを受けた
そして、まずは孤児院へ向かうことにした次へ